FUTURE CLASSICS vol.5
鈴木謙一郎ピアノ・リサイタル

鈴木謙一郎プロフィール
1991年第60回日本音楽コンクール第1位、併せて野村賞、河合賞受賞。桐朋学園大学音楽学部ピアノ科を首席で卒業後、同大学研究科入学。98年文化庁海外派遣研修生として渡仏しトゥールーズ音楽院を特別1等賞を得て修了。2003年ホロヴィッツ国際音楽コンクール銅メダル受賞など、数々の賞を受賞。数年を過ごしたウクライナでは、ソロやコンチェルトで30回を越えるコンサートNHK-TV(「クラシック倶楽部」「2017ナゴヤニューイヤーコンサート」等)、2024年NHK FMリサイタルパッシオにも出演。好評を博す。2009年3月、ラフマニノフを録音したCD「Ken-ichiro plays Rachmaninoff」をリリース。2019年10月には、ラフマニノフの愛したロシアのイワノフカにてピアノリサイタルを開催。限界を感じさせないスケールの大きさと、メランコリックな繊細さを併せ持つ音楽性は、聴くものを別世界へと誘うエネルギーを持っている。
現在、愛知県立芸術大学音楽学部教授、名古屋音楽大学客員教授。
師弟共演に寄せて
2026年8月22日(土)14:00開演
茨木市文化・子育て複合施設おにクル
ゴウダホール

乾:2026年8月22日の「FUTURE CLASSICS Vol.5」にて、私の恩師である鈴木謙一郎先生にご登場いただきます。来夏の話で少し気が早いのですが、9月にお目にかかる機会がありましたので、インタビューをお願いしました。鈴木先生、大変お久しぶりです。
鈴木:いやあ、本当に久しぶりですね。嬉しいですよ。
乾:もう何年ぶりでしょうか。2016年に私が留学に行っていて、その頃までレッスンをお願いしていましたから……。
鈴木:9年ぶりですね。最初の出会いは確か、突然お手紙をいただいた時からでした。
乾:桐朋学園の林秀光先生に東京でレッスンを受けていましたが、先生が亡くなられて……。その奥様から「高弟の鈴木謙一郎さんを訪ねてごらんなさい」とご紹介いただき、思い切ってお手紙を差し上げたのが最初でした。
鈴木:突然で驚きましたが、「林先生が指導していた学生なんだな」と思って、とりあえず一度会ってみようということで名古屋まで来てもらったんですよね。
乾:特に試験や受験など、大事な場面では必ずお世話になっていました。
鈴木:乾くんの実家が茨木市、私の実家は隣の箕面市。そんな縁もあって、最初から親近感がありましたね。
それにしても、よく名古屋まで通ってきていましたよね。信念を持ってピアノに取り組んでいると感じましたしたし、とても詳しくて「ピアノオタク」な一面もあって(笑)。私もそういうのが好きだったので、楽しくレッスンしていました。年ごとに着実に成長している印象でした。その後リスト音楽院に進まれて、それ以来、本当に久しぶりですね。
乾:帰国後は、全く仕事がない状態で「弾くしかない」という感じでした。30歳くらいまでに何も形にできなければ先の人生を考えなきゃと思いながら、自分でコンサートを企画しました。幸いお客様や周りの方々に支えられて、帰国以来これまでに200公演ほど主催事業を重ねてきました。経験を積み、大ホールでのコンサートもできるようになってきたので、今なら先生にお声がけしても良い時期だと思い、思い切って電話しました。
鈴木:ああ、そうだったんですね。私、電話はなかなか繋がらないことが多いんですよ。
乾:そうなんです。留学から帰ってきた頃もレッスンをお願いしたかったのですが、全然繋がらなくて。今回も難しいかなと思っていたら、たまたま2コールくらいで出てくださって。「これはご縁のあるタイミングだ」と確信しました。
鈴木:全然覚えてないけどね(笑)。失礼な話ですね。
乾:先生には、人生の節目で助けていただいた感覚があります。学校を紹介してくださったり、勉強の方向に迷った時に導いてくださったり。本当に感謝しています。
鈴木:そう言ってもらえると嬉しいです。最初に会った時から、君の音楽家としてのパワーや人間力はすごいと感じていました。絶対に自分の人生を切り開いていく人だと。尊敬していますし、今回2人で演奏会をやるのを本当に楽しみにしています。どんな風に音が合わさるのか、とても期待しています。
乾:ありがとうございます。演目はまだ全て決まっていませんが、先生のソロで《こうもりパラフレーズ》をお願いしたいと思っています。その上で、連弾や2台ピアノの作品を相談して決めていこうと考えています。先生も、日本ではあまり演奏されていないマニアックな作品がお好きなので、例えばゴドフスキー編曲の《舞踏への勧誘》。名曲ですが、この編曲で実演された例は非常に少ないと思います。そうした作品を取り上げるのも面白いのではないかと。
鈴木:ゴドフスキーは素晴らしい編曲を多く残していますね。ショパンの作品や《白鳥》の編曲も美しい。難しい作品が多いイメージですが、単に派手なのではなく、正統的で気品ある美しさを追求していた人だと思います。
乾:そうですね。その気品がどの作品にも表れていると感じます。ただ、合わせるのはかなり大変そうです。
鈴木:確かに。編曲作品は、元のメロディーを知らないと伝わりにくいところもあるので、モーツァルトやベートーヴェンの交響曲の楽章など、聴衆が親しみやすい作品を入れるのも良いと思います。美しい静かな曲と情熱的な曲、そのコントラストも大切ですね。
乾:ぜひそうしたプログラムにしていきたいと思います。最後に、来年に向けてお客様へ一言お願いします。
鈴木:来年は午(うま)年ですね。時代を駆け抜けるように、1年間しっかり準備を重ねて臨みます。ぜひ多くの方にご来場いただければと思います。