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連載③「音楽理論」

基本的な音楽理論の知識


1. 音楽理論とは

音楽理論は、音楽を作る、理解する、そして分析するためのツールです。ピアノを学ぶ上で、音楽理論の基礎を理解することは非常に有効です。なぜなら、音楽理論の知識があれば、楽譜を読むスピードや正確性を向上させ、音楽の背後にある構造やパターンをより深く理解することができるからです。

音楽理論は、古代からの伝統や慣習に基づく部分も多く含んでおり、それは人間が長い歴史を通じて発見してきた音の関係性や構造に対する知識の集積であるとも言えます。音楽は感情や心の動きを伝える手段として、また社会や文化の背景を反映するものとして発展してきました。

音楽のルールや理論は、人間が本来的に持っている音感覚や平均的な反応を基にして統計的にまとめられたものと捉えることができます。たとえば、メジャーのコードやスケールが明るく、マイナーのものが暗いと感じるのは、多くの人々が共通して持つ音に対する感覚の反映であると言えるでしょう。

音楽理論を学ぶ際には、ただルールを暗記するのではなく、その背後にある理由や意味を理解することが大切です。なぜそのルールが存在するのか、どのような背景や歴史があるのかを知ることで、音楽理論は単なるルール集ではなく、音楽のエッセンスや深い部分を探求する手段となります。これは音楽以外のすべての事柄に当てはまることです。

また、音楽理論は一つのフレームワークやツールとして捉えることもできます。ルールを知ることで、それを基にして新しい音楽やアイディアを生み出すことが可能になるからです。要するに、音楽理論は古代からの知識や統計的なものとして捉えることも、創造的な手段として捉えることもできるのです。どちらの捉え方を選ぶかは、それぞれの人やその目的に応じて異なるでしょう。


2. 音階とキー

音楽は、特定の階段的なパターン、すなわち音階に基づいて作られます。メジャースケールやマイナースケールなど、さまざまな種類の音階があります。キーとは、音楽が主に使用する音階を指し、それに基づいて音楽が構築されます。

さまざまな文化や地域によって多くの音階が存在します。西洋音楽の文脈では、メジャースケールやマイナースケールの他に以下のような音階が知られています。

  1. 全音音階(Whole Tone Scale) 連続した全音(ホールトーン)のみで構成される音階。ドビュッシーなどが愛用した。

  2. 五音音階(Pentatonic Scale) 5つの音だけで構成される音階。特に、大五音階と小五音階がよく知られている。多くの民族音楽やポピュラー音楽で用いられる。

  3. ブルーススケール マイナーペンタトニックに特定の音(ブルーノート)を加えたもの。ブルースやジャズに特有の音階。

  4. ハーモニックマイナースケール ナチュラルマイナースケールの第7音を半音上げた音階。オリエンタルな響きが特徴。

  5. メロディックマイナースケール 昇行時にはナチュラルマイナースケールの第6音と第7音を半音上げ、降行時にはナチュラルマイナーと同じにする音階。

  6. フリギア、ミクソリディア、ドリア など これらは教会旋法の一部として知られる音階群で、中世の音楽に起源を持つ。

また、西洋音楽以外にも、例えば沖縄の音階や、インド音楽の「ラーガ」やアラビア音楽の「マカム」など、様々な伝統音楽の中に独自の音階や旋法が存在します。これらの音階を学ぶことで、音楽の多様性や深さを感じ取ることができ、作曲や即興演奏の幅も広がります。


3. 和音の基礎

和音は、2つ以上の音が同時に鳴らされることです。和音は、音楽の構造や感情の表現に大きく影響します。三和音(メジャーコード、マイナーコードなど)やセブンスコードなど、さまざまな種類の和音が存在します。

三和音

  • メジャーコード(Major Triad)

  • マイナーコード(Minor Triad)

  • 増和音(Augmented Triad)

  • 減和音(Diminished Triad)


セブンスコード

  • メジャーセブンス(Major Seventh): メジャーコード + メジャーセブンス

  • ドミナントセブンス(Dominant Seventh): メジャーコード + マイナーセブンス

  • マイナーセブンス(Minor Seventh): マイナーコード + マイナーセブンス

  • マイナーメジャーセブンス(Minor Major Seventh): マイナーコード + メジャーセブンス

  • 減七のセブンス(Half-Diminished Seventh): 減和音 + マイナーセブンス

  • 完全減七のセブンス(Diminished Seventh): 減和音 + 減七度


拡張和音

  • これはセブンスを超えて拡張された和音で、9th、11th、13th などが含まれます。


トリスタン和声(Tristan Chord)

  • ワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」に登場する和音。非常に特徴的で解釈が議論される和音です。


神秘和音(Mystic Chord)

  • スクリャービンが愛用した和音で、彼の作品や理論において中心的な役割を果たします。


これらは、和音の一部に過ぎません。和音の構成や命名法は音楽スタイルや時代、地域によって変わることがあります。それぞれの和音は独自の響きや色合いを持っており、それを知ることで音楽の理解や表現が深まります。



4. リズムの理解

リズムは、音楽の時間的な構造を形作る要素です。拍子、テンポ、音符や休符の長さなどがリズムの要素となります。リズムの理解は、楽譜を読む能力や演奏のタイミングを向上させるために不可欠です。


5. 楽譜の読み方

楽譜は、音楽の言語とも言えるもので、音の高さ、長さ、強弱などを視覚的に表現したものです。五線譜上の音符の位置で音の高さを、音符の形で音の長さを判断します。また、シャープやフラットの記号で音の変化を示します。


6. ダイナミクスと表現記号

ダイナミクスは音の強弱を示すもので、pp(ピアニッシモ)やff(フォルティッシモ)などの記号で表示されます。また、スラーやスタッカート、フェルマータなど、さまざまな表現記号が楽譜には含まれており、それぞれが演奏のニュアンスや技術に影響を与えます。

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