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解説シリーズ【モーツァルト:連弾のためのソナタK.381】

執筆者の写真: 乾 将万(Inui Masakazu)乾 将万(Inui Masakazu)

モーツァルト「連弾のためのソナタ ニ長調 K.381」


1. 作曲の背景

モーツァルトと連弾作品

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756–1791)は幼少期から姉のナンネルとともに連弾演奏を楽しんでおり、連弾のためのソナタやデュエットを複数残しています。K.381は1772年頃、モーツァルトが16歳頃のザルツブルク時代に作曲されたと考えられます。


音楽文化としての連弾

18世紀後半から19世紀にかけて、ヨーロッパの貴族・市民層の間でサロンや家庭での連弾演奏が盛んでした。K.381のような作品は、そのような社交的・家庭的音楽文化を象徴するレパートリーです。


2. 楽曲の構成と特徴

1. 全3楽章構成

• 演奏時間は約12〜15分。モーツァルトの連弾ソナタの中でも、比較的短くまとまりが良い作品です。

2. 第1楽章:Allegro(ニ長調)

形式: ソナタ形式

音楽的特徴:

• 明るくはつらつとした主題が、2人の奏者の掛け合いで生き生きと展開。

• 中間部(展開部)ではモーツァルト特有の遊び心ある転調やテーマ変奏を楽しめます。

3. 第2楽章:Andante(ト長調)

形式: 三部形式に近い構造

音楽的特徴:

• 穏やかで優美な旋律が連弾によって丁寧に紡がれ、内声部の美しさが際立ちます。

• 和声はシンプルながらも繊細に組み合わされ、モーツァルトの抒情性を感じられます。

4. 第3楽章:Allegro molto(ニ長調)

形式: ロンドあるいはソナタ・ロンド形式

音楽的特徴:

• 快速かつ躍動感にあふれるフィナーレ。

• 2人のピアニストがユニゾンや掛け合いで細かいパッセージを繰り広げ、技巧面でも楽しさが満載です。


3. 楽曲の意義と評価

若きモーツァルトの魅力

16歳前後の作曲とはいえ、すでに成熟したソナタ形式の把握と旋律美が見られます。瑞々しい感性が全体にあふれる作品です。

連弾レパートリーの定番

モーツァルトの連弾ソナタの中でも人気が高く、しばしばアマチュアや学生の連弾演奏会のプログラムにも取り上げられます。

家庭内音楽の歴史的意義

当時のヨーロッパでは家庭で連弾を楽しむ伝統が根付いており、K.381のような曲が作られたこと自体が、音楽史における社交文化の一端を示しています。


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