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解説シリーズ【ショパン:ラルゴ(遺作)】

執筆者の写真: 乾 将万(Inui Masakazu)乾 将万(Inui Masakazu)

ショパン「ラルゴ(遺作)」


1. 作曲の背景

遺作としての位置づけ

「ラルゴ(Largo)」と呼ばれるショパンの小品は、生前に出版されずに残された“遺作”群の一つです。具体的な作曲年は明確でないものの、スケッチや草稿の中から発見され、後世になって補筆・整理されて出版されました。


ショパン後期の作品か

ショパンは晩年期に健康が悪化しつつも、いくつかの短い小品を書き留めていたとされています。この「ラルゴ」がいつごろ書かれたかについては諸説ありますが、晩年(1840年代後半)の習作または即興的な性格を含む作品と推測されています。


2. 楽曲の構成と特徴

1. テンポと調性

• 「ラルゴ(Largo)」と題されている通り、ゆったりとしたテンポで書かれています。

• 調性は変ホ長調(E♭ major)とする文献が一般的ですが、原典資料の不完全さから異なる説が示されることもあります。

2. 曲想と書法

• 全体として規模は小さく、演奏時間は2分程度。淡い憂いを含みつつも穏やかで、どこか即興的な趣を感じさせます。

• ショパン特有の繊細な和声進行と叙情性が凝縮された短い小品であり、完成度よりも断片的な美しさが魅力です。

3. 演奏上の注意点

• 大きな技術的困難は少ないものの、静かでシンプルな構成だけに、音色やペダリングの繊細さが求められます。


3. 楽曲の意義と評価

遺作としての研究的価値

大作のソナタやバラードと比べればマイナーな存在ですが、ショパンの作曲過程をうかがい知る資料として音楽学的に興味深い存在です。

小品の愛好家にとっての宝石

ショパン好きの演奏家や愛好家からは、控えめな中に漂うショパンらしさが好まれ、時折アンコールなどで取り上げられます。

ショパンの死後の評価

生前に出版されなかったため大きく注目されることは少ない作品ですが、ショパン芸術の幅を知るうえで一聴の価値があります。


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