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レッスンの目標

執筆者の写真: 乾 将万(Inui Masakazu)乾 将万(Inui Masakazu)

ピアノを習いにくる子たちは、本人も保護者も千差万別。ある子にとって最適な選択が、ある子にとっては全然良くないものだったりもします。

目標が最初から「音大に行く!」など決まっているこの場合は比較的簡単。大学卒業時まで見据えたプランを設定してひたすら頑張るだけで済みます。

でもほとんどの子たちはプロを目指すわけでもない...では何故ピアノを習いにレッスンへ通うのか。

とにかく音楽に触れるため、教養のため、脳が発達すると噂を聞いた、ただなんとなく...色々だと思います。少なくとも保護者の皆様は、子供たちの成長になんらかの良い影響を期待されるはずです。そして、次の段階では”成果”を期待する。当たり前の感情です。

しかし、問題はピアノという楽器を弾くのが難しいこと。音を出すこと自体はキーを押すだけですが、楽譜を見て頭で理解し、実際に鍵盤を操作して、出した音をよく聴きながら、テンポを一定に維持して、ハーモニーのバランスを崩さずに、メロディを美しく聴かせるのです...それも数分間。。。難しいに決まっています。

成果が出て達者に弾けるようになるまでにすっかりピアノが嫌になる。それは今も昔も大差ありません。一定の成果を出すためには練習時間も不可欠ですが、一番大切なことは「理解する」ことです。レッスンでは、問題を一つ一つ解決していく過程の思考力を育成したいと考えています。これこそが本質であり、音楽以外にも役立つ能力です。そのため、ある程度のパターンを教えた後は、「今なぜできなかったか」「どのように解決できると思うか」といった質問を常に投げかけます。これは実はとても難しいことで、たいていの場合すぐには反応できません。怒られていなくても、聞かれただけで何か追い詰められた気がして頭が止まってしまいます。何を隠そう、私自身は大学院時点でも大してできていなかったのですから、すぐに出来なくても不思議ではありません。気長にやっていくだけです。

音楽レッスンでの成長は目に見えにくいもの。3歳児など、小さい子供たちだと一見ピアノの上では何ヶ月経ってもほとんど何も変わっていない。保護者の方は少々不安そうです。でも、レッスン中に突然歌い出したのをよく聴いてみましょう。最初の頃はめちゃくちゃな音程で歌っていた童謡が、自然とドレミにはまって歌えるようになっていたりします。本人は多分無意識。そういう時は間違った音...調性から外れた音を弾くと違和感を感じてやり直すようになったりします。

小さい子の場合、いきなり流暢に弾けるようにはなりませんが、着実に成長しているもので、その速度は大人よりも速いものです。音に触れて自然にいろいろ身についていく段階と、少し頑張って壁を越えなければならない段階があります。さじ加減の難しいところですが、何年もレッスンに通っているのに何も上達していない...ような状態は避けたいものです。


さて、記事の最後にINUI MUSIC SALONでの「目標」についてお話ししましょう。

最終目標は”音で遊ぶ”ことです。私自身もほとんどいつも必死で弾いていますが、大学時代、非常に素晴らしい音楽家の演奏を聴いた時、まさに音で遊んでいらっしゃるように感じたものです。空間に響く音の全てを自在にコントロールしているのに、とても自由で開放的な音楽だったのを覚えています。

2023年に兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホールでスタート予定の「音で遊ぶ」シリーズはこの時の体験から発想したものです。プログラムは少々盛り込みすぎました。現時点では”遊ぶ”余裕など到底ありません。1年かけてレベルアップして、遊べるようにしたいものです。





 
 
 

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